こんにちは。管理栄養士のゆみです。
前回の記事において、飢餓状態・低出生体重児で生まれた赤ちゃんが、生活習慣病のリスクをかかえていることをお話しました。
今回は、より詳しく、低出生体重児と女性の栄養についてお話したいと思います。赤ちゃんは宇宙からの贈り物であるといいます。
第二次世界大戦時に、低栄養と低出生体重児とその後の生活習慣病の関連を示した有名な研究があります。
1944年12月~1945年4月、ナチスドイツがオランダに侵攻してオランダの人々が著しい低栄養状態に暴露され、多くの人々が栄養失調でした。
一日摂取エネルギーは400~800kcal というひどい状況にあったのですが、その低栄養にさらされた母親から生まれた子どもたちの多くの人々が生活習慣病を発症していました。
また、最近はさらに、低出生体重児とその後の病気発症の研究は進んでいます。
出生体重低下により、発症リスクの多くなる疾患として、①虚血性心疾患 ②2型糖尿病③本態性高血圧 ④メタボリックシンドローム⑤脳梗塞 ⑥脂質異常症⑦神経発達異常等があげられるといいます。(早稲田大学福岡秀興先生)
さらに、ユニセフの世界子ども白書(2017年)でも、世界規模で低出生体重児の増加の問題が課題となっています。
2015年の低出生体重児の出生率が推計で最も低い国のひとつはスウェーデンで2.4%。アメリカ(8%)、イギリス(7%)、オーストラリア(6.5%)など、いくつかの先進国では7%前後。
日本は9.5%で、2000年の8.6%から増加しているそうです。日本は先進国でも大変深刻であります。
これらの問題は、ユニセフの専門家が世界的医学雑誌「ランセット」でも発表しています。
これらのことからわかるように、日本の出産適齢期女性は「栄養不足」である場合が多いことを示しています。
ライフスタイルの変化、ストレス、環境化学物質、いろいろな要因が重なって、妊婦さんの子宮内の栄養環境が低下しています。
受精卵が着床する前と着床する時期、胎児期の栄養はもちろんのこと、生まれた後から3歳くらいまでの栄養も、一生の健康状態に関係していきます。
遺伝子の調整に関わるスイッチが、胎児期と出生後2から3年くらいまで働くと言われています。
胎児期から3歳くらいまでの身体つくりは特に大事です。
遺伝子の調整が健康な身体作りへと働くためには、若い女性が栄養についてもっと関心をもつ必要があります。
さらに、脳の神経は10歳くらいまでが一番盛んに活動しているといわれています。
ただたくさん食べればよいというのも、栄養不足回避にはつながりません。
「栄養がきちんと回っている」ことが大事です。
栄養がきちんと回るためには、記事の第1回目でご紹介した「腸内環境」を整えて、必要な栄養素をきちんと摂取することが重要だといえます。
また、妊娠を望んでいる女性は、たんぱく質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルの基本栄養素に加えて、遺伝子の調整機能に関わる、葉酸・ビタミンB12、ビタミンDの摂取を十分に行いましょう。
特に、ビタミンDは女性の生殖活動に関わり、妊娠前後に必要不可欠です。年々、女性のビタミンD摂取濃度は低下しています。
体外受精を受けている女性の血中ビタミンD濃度は、妊娠率や出産率との間に関連があることも論文で発表されています。
参考論文: Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis
Justin Chu et.al. Human Reproduction, Vol.33, No.1 pp. 65-80, 2018
妊娠を考えている方もそうでない方も、地球規模で未来の健康な子どものために、身近な栄養や環境を考えていきましょう。